咬合とは
咬合とは上顎と下顎の歯または義歯の噛み合わせのことを言います。
人の場合、上顎は頭蓋骨に固定されていて、下顎は主に複数の筋肉によって頭蓋骨からつり下がっています。
これらの筋肉が収縮あるいは弛緩することで顎関節を中心にして、下の顎が動きます。
すなわち咬合には歯・筋肉・顎関節および中枢神経系が関与しますので、そのうちのどれか一つに問題が生じると咬合にも影響がでます。
特に人の顎関節は回転運動の他にも前後左右にも動くことができ、複雑な構造でトラブルが生じやすい環境にあります。
咬合の種類
「矯正歯科」のページでも少しお話しさせていただきましたが咬合の種類についてご説明いたします。
まず咬合には「正常咬合」と「不正咬合」があります。
正常咬合
- 全ての歯同士の接触点が理想的な位置にある
- 上顎の歯が下顎の歯より外側に適度な量だけ出ている
- 下顎の前歯と上顎の最も奥の歯を除いて、上顎と下顎の歯が1歯対2歯で噛み合っている
- 上顎と下顎の前歯部の正中(中心)が一致している
- 下顎の犬歯から後ろの歯が、上顎の犬歯から後ろの歯より少し前に噛み合っている
- 上顎の奥歯と下顎の奥歯の噛み合わせ面の凹凸がしっかりと合っている
- 下顎を前に向けて動かし始めた時、上顎と下顎の奥歯が当たらない
- 下顎を横に向けてずらして嚙み合わせると、上顎と下顎の前歯が離れる
不正咬合
1.叢生(そうせい)
大きい歯があったり、顎が小さかったりして歯の生えるスペースが狭くなってしまっている状態を言います。
歯と歯の間のスペースが極端に狭くなってしまうので、歯がまっすぐ生えてくることができず、ガタガタになってしまいます。
また、歯が生えるスペースがほとんどない場合、歯茎を突き破って横から生えてきてしまうこともあります。
2.反対咬合(受け口)
下の前歯や下顎全体が前に出てしまっている状態を言います。
顎がしゃくれてしまい、サ行やタ行の発音が不明瞭になることも多いです。
また、噛む力が低下することもあり、顎に負担がかかりすぎて顎関節症の原因になることがあります。
3.過蓋咬合(かがいこうごう)
奥歯で噛んだ時、上の前歯によって下の歯が4分の1くらい隠れるのが正常な状態ですが、噛み合わせが深すぎて、下の歯がほとんど見えない歯並びのことを言います。
噛み込みが深いため、奥歯への負担が強くかかってしまい、奥歯のすり減りが激しくなる傾向があります。
また、噛み合わせが深いことで下顎の動きが制限されてしまい、顎関節に強い負担がかかりやすいため、顎関節症を起こしやすくなります。
4.切端咬合
上下の歯の先端がちょうど当たる状態のことを言います。
上の歯と下の歯の間に本来あるはずのスペースがなく、放っておくと歯の先が欠けたり摩耗したりする場合があります。
舌の動きや口呼吸・顎骨の成長の異常のために起こりやすいと考えられています。
5.交叉咬合
通常、下の歯は上の歯の内側にありますが、それが1歯~複数歯にわたって反対になっている状態を言います。
上の歯の内側にあるはずの下の歯がどこか1歯でも反対になっていると、そこを起点として下顎は横にずれて成長していってしまいます。
成人になってから治そうとすると外科矯正が必要になる場合があります。
6.開咬
噛み合わせた時に上下の前歯の間に隙間が空いていて、食べ物が噛み切れない状態を言います。
舌が出てサ行やタ行などの発音が不明瞭であったり、前歯が嚙み合わないので奥歯に負担がかかってしまいます。
7.上顎前突(出っ歯)
奥歯で噛んだ時に上の前歯が前方に出ており、唇が閉じられない、唇を閉じると顎の先端に梅干しのようなシワができるといった状態になります。
常に口が開いているため、口が乾いて虫歯や歯周病になりやすくなります。
また、口元が出ているため、見た目にコンプレックスを抱えやすいという心理面での影響もあります。
8.空隙歯列(くうげきしれつ)
歯と歯の間に隙間がある状態のことを言います。
生まれつき歯の本数が少ない場合や上唇から前歯歯頚部に繋がる小帯の異常によって起こる場合があります。
発音障害や食べ物がつまりやすく、歯周病や虫歯の原因となることがあります。
主な不正咬合の悪化要因となる生活習慣
口呼吸
口が開いていることにより、上顎前突になる可能性があります。
指しゃぶり
上下の前歯間に指や舌等が入ることにより、開咬になる場合があります。また親指で上顎前歯を押し続けることにより、上顎前突になる可能性もあります。
舌癖
よく唾を飲み込む際に舌が前に出てくる人がいます。
リラックスした状態の舌はスポットと言われる、上顎前歯の裏のわずかにへこんだ部分にあることが通常で、唾を飲み込む際もスポットに舌先を当てた状態で行います。
しかし、舌癖があり舌を前に押し出しながら唾を飲み込むと、人は一日に約600回
嚥下運動をしているため、歯がどんどん押し出され開咬の原因になります。
よく噛まない
よく噛まないことにより、歯列発達が促されないと言われています。
過度の食いしばりや頬杖
歯列に過重負担がかかると不正咬合の原因になります。
最後に
不正咬合は見た目だけではなく生活にも影響を及ぼします。
また不正咬合の要因として「遺伝」をイメージされる方も多いと思いますが、日々の生活習慣によって不正咬合になってしまう患者様もたくさんいらっしゃいます。
まずは何が原因なのか、その根本となる生活習慣を見直さないと、矯正治療を受けてきれいな歯並びになってもまた元に戻ってしまいます。
小さいお子様が生活習慣を見直し、舌癖を治すトレーニングを行ったことで生え変わりの際に改善されたケースもありますので、気になる方はぜひ一度ご相談ください。