こんにちは、高知市高須のあさぎ歯科医院です。
今回は、インプラント治療の概要についてご紹介します。
むし歯や歯周病など何等かの理由により歯を失った場合には、歯を補う治療が必要です。その方法の一つとして挙げられるのがインプラントです。治療の特性をよく理解して後悔のない治療を進めましょう。
インプラント治療とは?
インプラントとは、歯を失った箇所の顎の骨にインプラント体とよばれる人工の歯根を埋め込み、その上から歯冠の役割をする人工歯(上部構造)を被せる治療方法です。「インプラント」という言葉そのものは本来体内に埋め込む医療器材の総称を指すため、歯科治療において行われるインプラントは精確には「デンタルインプラント」です。しかし、歯科におけるインプラント治療が広く普及してきたため、「インプラント」といえば歯科の治療であると認識されるようになりました。
インプラントの歴史
インプラントというと新しい治療方法のように思いますが、意外なことにその歴史はとても古く、紀元前にまでさかのぼると言われています。南アメリカで栄えたインカ文明でミイラからサファイア製の人工歯根が発見された、エジプト文明で歯が抜けた箇所に宝石を埋め込んだ跡が見つかったなど、インプラントは想像以上に昔から歯を補うための治療として行われてきたのです。
その後時は経ち、1885年にアメリカのヤンガー氏が人工歯を歯槽骨に移植する手術を行った際に「インプラント」という名称が初めて使われたと言われています。歯の代わりになるものとして宝石や貝殻、人や動物の歯、骨など様々なものが試されてきましたが、骨と結合しない、身体に馴染まない、といった課題がありました。1952年にスウェーデンのブローネマルク氏が骨とチタンが結合することを偶然発見したことで、そこからインプラントの治療は大きく発展を遂げます。素材や形、技法などの研究が進んだことで、1965年に初めてチタン製のインプラントが使われました。
日本において初めてチタン製のインプラントが使用されたのは、1983年頃のようです。それから約40年の間、多くの歯科医師や研究者が試行錯誤を繰り返し、現在のように安心で安全な治療方法へと発展しました。
インプラントの構造と素材
インプラントは人工歯根、上から被せる人工歯、それらを連結するものから構成されています。それらを詳しくご紹介します。
インプラント体(人工歯根)
顎の骨に埋め込むインプラント体は、歯の根の代わりをします。多くが純チタンかチタン合金でつくられたもので、チタンは人工関節など歯科以外の医療分野においても幅広く使用される生体親和性の高い体に優しい材料です。
インプラント体の主流は直径約3~6mm、長さ約8~15mmのスクリュータイプですが、骨の量や厚みに合わせて様々な選択肢があります。日本国内では約20社のインプラントが流通しています。
アバットメント(連結部分)
インプラント体と上部構造を連結する土台となるのが、アバットメントです。アバットメントは上から上部構造を被せると外からは見えなくなります。多くは純チタンかチタン合金で作られたものですが、一部セラミックで作られたものもあります。
上部構造(人工歯)
外から歯として見える部分であり、歯冠の役割を果たすのが上部構造です。アバットメントの上から装着します。審美性と耐久性に優れるセラミックやジルコニアで作られることがほとんどです。これらの材料はただ白いだけでなく、天然歯に近いような色合いや透明感が特徴であり、全てオーダーメイドで一つずつ作られるため隣の歯の色に近い見た目にすることができます。また、表面が滑沢なためプラークや細菌がつきにくく、清掃性にも優れています。インプラントの治療完了後にメンテナンスをしていくことを考えても、インプラントの上部構造として適している素材であるといえるでしょう。
インプラントの特徴
インプラントは人工歯根を直接顎の骨に埋め込みます。人工歯根の素材であるチタンは骨と直接結合する性質をもつので、歯根と歯槽骨をつなぐ歯根膜が存在しません。顎の骨にしっかりと固定されるため、ものを噛んだ時に不安定になることや違和感がでることもありません。
インプラント体、アバットメント、上部構造の全てが人工のものなので、むし歯になることはありませんが、メンテナンスを怠るとインプラント周囲の粘膜が炎症を起こすインプラント周囲炎を発症します。インプラント周囲炎はインプラントの治療完了後に最も注意しなければならない病気で、歯周病のような症状が出ます。この場合、症状が進行するとインプラントが抜け落ちてしまうこともあるため、毎日の丁寧なセルフケアや定期的な歯科医院でのメンテナンスが非常に重要になります。
まとめ
今回は、インプラント治療の概要についてお話ししました。インプラントは長い歴史の中で様々な試行錯誤が繰り返され、現在のような高い成功率をもつ治療方法になりました。次回はインプラントのメリットとデメリットについて詳しくご紹介します。
当院では患者様お一人おひとりに最適な治療方法をご提案いたしますので、お気軽にご相談ください。