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歯列矯正治療で歯が動く仕組み。歯が移動するってどういうこと?

こんにちは、高知市高須のあさぎ歯科医院です。

噛み合わせが悪く、歯並びが乱れている状態を不正咬合と言いますが、不正咬合が見られる場合は歯列矯正治療を行うことで、歯列を整えて噛み合わせを改善します。しかし「歯列矯正治療を行うことでなぜ歯が動くの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

この記事では、歯列矯正治療で歯が動く仕組みについて解説していきます。

■歯が動く仕組みには「歯根膜」の働きが大きく関係している

歯列矯正治療を行い歯を動かすといっても簡単に動くわけではありません。歯を目視で見ると、歯茎に直接埋まっていてくっついているように見えますが、実は歯と歯茎の骨=歯槽骨は直接くっついているわけではありません、歯と歯槽骨の間には、厚さ約0.2mmほどのクッションのような役割を持つ「歯根膜」という繊維が存在しており、食事や外傷などによる衝撃をやわらげる役目を持っています。この歯根膜が歯列矯正で歯が動く仕組みに大きく関係しています。

矯正装置によって歯に力が加わるとそちら側の歯根膜は圧迫され、厚さが縮まっていきます。これを吸収と言いますが、歯根膜には常に同じ厚さを維持しようとする性質があるため、隙間が生じた反対側の歯根膜には新しい骨が作られます。こうした吸収と再生を繰り返すことで、歯根膜の厚さが元に戻りつつ、歯も徐々に移動していくのです。歯列矯正治療は長期間に及ぶケースが多いですが、これは骨が作り替えられるのを待つ必要があるためです。

力が加わり歯根膜が縮んで骨がなくなる
→吸収

逆方向で元の厚さに戻る力が働き新しい骨ができる
→再生

■歯が動くスピードはどのくらい?

歯が動くのは非常にゆっくりなスピードで、1ヶ月に0.5〜1mm程度です。強い力を加えればそれだけ歯も速く移動すると感じるかもしれませんが、歯根膜や顎骨に大きなダメージを与えてしまう原因になります。このようなリスクを考慮したうえで、体に安全だと思われるペースと強さで矯正治療を行います。歯列矯正治療は焦らず行うことが大切です。時間がかかるということを念頭に置いておきましょう。

■歯列矯正治療ができないケース

歯列矯正治療には歯根膜が大きく関係しているので、外傷や怪我などにより歯根膜に負担がかかり潰れてしまうと、歯列矯正治療をすることは難しくなります。歯と歯槽骨がくっついてしまうと、歯根膜の役割が意味を持たず、歯列矯正治療をしても意味がありません。歯列矯正治療にとって歯根膜がどれほど重要な働きを持っているのかがわかります。

■歯の移動のさせ方にも種類がある

歯列矯正治療で歯を動かすと言っても、その方法はひとつではありません。多くの方が水平に歯を移動させて整える歯体移動をイメージすると思いますが、他にも下記のような動かし方も存在します。

・圧下

上に向かって飛び出している歯を下に向かって埋め込む動かし方

・挺出

埋まっている歯を歯茎から上に向かって引っ張り出す動かし方

・捻転

歯の先端と歯根を結んでいる軸に沿い、ねじれて生えている歯の向きを回転させて整える動かし方

・傾斜移動

歯が倒れている場合などに歯の頭を起こす動かし方

・トルキング

歯の頭はあまり動かさずに歯根を移動させる動かし方

実際の歯列矯正治療はただ水平に歯を移動させるだけでなく、これらの動かし方を複雑に組み合わせることで移動させていきます。

■ワイヤー矯正で歯が動く仕組み

ワイヤー矯正はブラケットと呼ばれる器具を歯の表面(あるいは裏側)に取り付け、そこにワイヤーを通して固定させて力をかけることで歯を移動させる歯列矯正治療の方法です。従来から存在している治療方法で、取り扱っている歯科医院も多いです。

*歯が動く仕組み

ワイヤー矯正では、ワイヤーの性質を活かしてワイヤーを調整することで歯に継続的に力を加えて歯を移動させていきます。ワイヤー矯正で動かせる距離は1ヶ月で大体0.3〜0.5mmほどと言われています。単純計算で0.5mm動かせたとしても、3mm動かすのにも半年は必要になります。

■マウスピース矯正で歯が動く仕組み

マウスピース矯正は採取した歯型を元に作った透明のマウスピースを歯に装着することで歯に力がかかり、ゆっくり移動させることで整えていく方法です。一日あたりの装着時間は20〜22時間以上で、1〜2週間ごとに新しいマウスピースに取り替えます。歯根膜の動きを利用するという点ではワイヤー矯正と同じですが、アプローチの仕方が異なります。

*歯が動く仕組み

作られるマウスピースと現状の歯並びの間にはズレがあり、このギャップによって歯に圧力がかかり歯を動かすことができます。先述したように一定期間ごとに新しいマウスピースへと取り替えますが、1枚あたりの装着で大体0.25〜0.35mmほど動かすことができます。ワイヤー矯正と比較すると痛みが少ないと言われるのも動かし方に違いがあるためです。

■移動した歯を固定するために必要な「保定期間」

ワイヤー矯正でもマウスピース矯正でも、どんな歯列矯正治療方法でも必ず必要になるのが保定期間です。治療して歯を正しい位置へ動かしても、元の位置へ戻ろうとする力が働いてしまいます。これを防ぎ、正しい位置に留めておくためには保定装置=リテーナーを装着する期間が欠かせません。保定期間は治療期間と同じか、それ以上の期間が必要になるので、治療期間と合わせると長期におよびますが、これを乗り越えれば理想とする美しい歯を手にすることができます。治療後に「もう綺麗になったから大丈夫」と思わずに、担当医の指示通りに保定期間もしっかりリテーナーを装着しましょう。

■まとめ

歯列矯正治療で歯が動く仕組みについてご理解いただけましたしょうか?歯列矯正治療を行い噛み合わせと歯並びが整えばあらゆるトラブルも解消されるはずです。不正咬合を放置してしまうと、全身の不調を招く原因になるのでなるべく早めに治療をしましょう。

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